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ペットとの避難、災害時に飼い主に立ちはだかる問題とは!

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地震や水害など日本は自然災害が多い。被災によって自宅での生活が困難な場合、避難所暮らしを強いられることになるが、その場合、「愛するペットをどうすべきか」という難問が立ちはだかる。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

【大きな災害が起きるたびペットの避難が気になる】

ペットを飼っている人の大半は、「ペットは子ども同然」「かけがえのない大切な家族」と思っている。

世の中、空前の猫ブームが到来しているらしいから、こんなペット愛を理解してくれる人たちの方が、「理解できない派」よりも大勢を占めていると思いたい。

だが、たとえペット愛理解勢力でも、大災害時には「人間の生命が危うい時に、ペットなんかに構っている場合じゃない」となってしまうかもしれない。

2015年の9月に起きた常総大水害では、鬼怒川の堤防が決壊したことによって、今にも濁流に飲み込まれそうな民家の屋根に取り残された夫婦と柴犬2匹が、自衛隊のヘリコプターで一緒に吊り上げられ、共に救出される様子が日本中の注目を浴びた。

救出した自衛隊員には、称賛と同じくらい、批判の声が寄せられたという。ペットを家族と思っている人間にとっては、一緒に救出されるのは当然のことなのだが、逆に、苦々しく思う人もいる。

「税金使って、犬畜生なんか助けるんじゃない」と……。

筆者は、地域猫出身のメス猫と、先天性の疾患を持つオス犬を“家族”として迎え入れて同居している。彼らは完全な家族なので、動物だから、見殺しにしても構わないとは絶対に思えない。

むしろ、人間社会に、動物の命を軽んじる風潮があるからこそ、(この子たちを守ってあげられるのは自分しかいない)という使命感で熱くなる。

特にこの6月は大阪府北部地震があり、6月後半からは全国で「記録的な大雨」が続き、水害も起きている。この「自然災害列島」で、私たちはいかにして、ペットを守ればいいのだろう。

まずは最も肝心な自分が住んでいる地域(神奈川県川崎市)の、ペットに対する防災対策を調べてみた。

 

「ペットも一緒でいい!」同行避難が推奨されている


 

川崎市は2013年から16年まで連続で犬の殺処分ゼロ(猫は4頭)を達成(2017年は犬1頭、猫19頭)。筆者は10年から、川崎市動物愛護センターの活動を見守ってきたが、職員とボランティアの皆さんの努力と誠実さには、本当に頭が下がる。

だいぶ減少しているとはいえ、全国では依然犬猫合計で5万5998匹(前年度比較で67.5%)もの殺処分が行われている。川崎市も神奈川県も、ペットの生命を大切にする意識は、他の自治体に比べ、相当高いことは確か。そんな川崎市なのだから、ペットに対する防災対策もきっと進んでいるはずだと期待した。
川崎市のガイドブック


川崎市の『備えていますか? ペットの災害対策~飼い主の備えと避難所ペット管理ガイド~』

川崎市は15年3月に、『備えていますか? ペットの災害対策~飼い主の備えと避難所ペット管理ガイド~』を作成し、災害への備えを呼びかけてきた。

18年には、より具体的で、使い勝手のいい「ペットの飼い主のための防災手帳」も作成され、ネットでダウンロードすることもできるし、各区役所保健福祉センター衛生課窓口などでもらうこともできる。

このガイドブックは、東日本大震災等の教訓を踏まえ、13年に環境省が策定した「災害時におけるペットの救護ガイドライン」を参考にしてまとめたもの。同様のものを制作している自治体は、他にも結構多そうだ。

まずは、「飼い主がやるべきこと」として、「日頃からペットのしつけや健康管理を適切に行い、災害時に備えましょう」とある。

具体的には、「平常時対策」と「災害時対策」に分かれており、前者は「日常のしつけと健康管理」「避難経路の確認」「ペットの防災用品の準備」「預け先の確保」について、後者は「安全の確保と避難」「避難所でのペットの飼育」について説明されている。

その中で実際にペットを飼育する立場として注目したのは、ペットを自宅に置き去りにせず、「同行避難」するように勧め、かつ避難所の開設・運営も、同行避難を前提に考えられていることだった。避難は、ペットと一緒の方がいい、避難所も、ペットを受け入れてくれる、というのはありがたい。

「背景には、過去の災害時の反省がある。」

東日本大震災等では、「ペットを連れている」という理由で、避難所に宿泊せずに野外生活・半壊の家屋に留まる・車中泊を選択し、そのせいで2次災害に遭ったり、災害関連死に遭うというケースが多発したという。

そこで、このようなことを避けるために、同行避難が推奨され、飼い主は平常時からペット用の避難用品を準備し、避難所生活に備えてしつけを行う等、ペットとの同行避難を行うための準備をすることに。

一方避難所を開設する側は、「ペットを連れての避難を希望する避難者」を想定して、避難所の受け入れ条件や管理方法を平常時から検討しておくなど、同行避難してきたペットを混乱なく受け入れることができるよう、あらかじめ検討しておくこと、というガイドラインが作られたというわけだ。

基本はあくまでも「自助」であり、ペットの世話をするのは飼い主だが、行政も、フォローしてくれる。それはいいことだと思う。しかし筆者は、避難所のレイアウト例と、その際の諸注意を読んで「これは無理だ」とがっくりきた。

 

◆避難所のレイアウト例

避難所のレイアウト図


川崎市の『備えていますか? ペットの災害対策~飼い主の備えと避難所ペット管理ガイド~』より転載


それは次のような内容だ。

避難所でのペットの飼育場所は、「鳴き声や臭いなどによるトラブルを避けるため、人の居住場所、炊事場や洗濯場所など生活範囲から離れた場所が望ましい」。

だから飼い主は平素から、ペットが避難所生活に適応し、トラブルが起きないよう、「キャリーバッグやケージ内での生活に慣れさせ、ペットにとって安心できる場所にしておくこと」。

避難所では飼い主と一緒の建物やテントで寝起きすることは許されない。だから「飼い主が近くにいない間吠え続けていては迷惑になる。平常時から留守番など飼い主と離れることに慣らしておきましょう」。

我が家の愛犬は室内犬で、ほぼ一日中、私の足元にいる。昨年筆者が、ほんの2日間家を空けた際には、水さえも喉を通らなくなり、嘔吐しまくった末に脱水症状を起こし、動物の救急外来で点滴を受けた。レントゲンを撮った獣医さんが言った。

「ストレスでしょう。何か不安になることがありましたか」。筆者が泊りがけで出張するのは決して珍しいことではないが、いつにも増して不安に感じたらしい。他の家族は家にいたのに、だ。そんな愛犬をもし、私たちとは違う場所につながれたらどうなるだろう。2日と持たないような気がする。

1日程度なら、独りでいい子に留守番はできる。だがそれは、皆の様子が安定している場合に限られる。ちょっとでもいつもと違う雰囲気がある時は敏感に察知して、ピーピー鳴き続ける。トレーニングなんてできそうにない。

まして、猫は不可能だ。抱っこしていようが、ケージに入れていようが、家から外に出した途端、平たくなって固まり、動かなくなる。別の場所で寝泊まりするなんて、ムリだ。

 

ペットの災害対策は日常の延長線上にある


 

がっくりきた筆者に、前を向かせてくれたのは、今年3月に開催された「人とペットの災害対策シンポジウム」のレポートだった。

環境省が主催したシンポジウムの概要を報告したものだが、ネットでも読むことができ、災害時にペットを守るにはどうしたらいいのかを考える上で、とても参考になる。

環境省自然環境局動物愛護管理室の則久雅司(のりひさ・まさし)さんの基調講演では、熊本地震の際の被災者の行動を振り返り、「同行避難後にどのような選択肢があるか」の例示がためになった。

「一つは避難所での飼養です。二つ目が自宅での飼養で、これは熊本地震でも多く見られました。飼い主は避難所に、ペットは自宅にいて、面倒を見に帰るのです。番犬の場合は、盗難対策も兼ねていたようです。

三つ目が車の中での飼養です。熊本地震では車中泊をされる方も多くいました。(中略)四つ目の選択肢が、施設などに預けることです。

親戚や友人宅、自治体施設、動物病院、民間団体など、恐らく預け先は色々とあるでしょう。

避難直後は無理ですが、時間が経てばこのような支援も始まるということが情報として伝われば、避難所でペットを抱えて困っている方にとっても、先の見通しが立つのではないかと思います」

いったんは避難所に同行しても、様子を見て、自宅に置いておけるようならそれもよし、というのはいい。自宅に倒壊、浸水の恐れがある場合は難しいが、それこそ平時から、ペットが自宅で避難していられるような工夫を凝らしておくのは、同行で避難所生活をするよりは現実味があるような気がする。

危機管理教育研究所 代表で、危機管理アドバイザーの国崎信江(くにざき・のぶえ)さんの、「避難所に行くことを前提とせず、自宅で継続して過ごせるようにしておけば、ペット問題も軽減できるのではないでしょうか」という提案も、具体的かつ現実的だった。

熊本地震の際、益城町では、地盤が弱いために、比較的新しい家でも全壊した例があったそうで、「地盤、建物の強さも含めて継続して自宅に住める環境を築いておくことも重要ですし、さらに室内でペットが怪我をしないようにする対策も必要」と語る。
◆ペットが怪我をしないようにする対策例
・家具は大小、背丈、重量関係なく、すべて固定しなければ動き、人やペットを襲う凶器となる。
・ただし、固定すればするほど家具の中身が飛び出しやすいので、中身の飛び出し防止対策は必須。
・一戸建てとマンションでは、それぞれ防災対策が異なる。マンションの場合は、上階ほどしっかりとした防災対策が必要。
・人間の足も、ペットの肉球も保護するためにお勧めしたいのは、生活雑貨類に、できるだけ柔らかい素材のものを選ぶこと。たとえば掛け時計も、割れてガラス片が出ないよう、数字と針を直接壁にはるタイプに変え、傘立てや写真立て、ごみ箱などのすべての生活雑貨類を紙、皮、布、ゴム、シリコンなどの柔らかい素材に変える。

…生活者の視点が光る、目からウロコの提案だ。

さらに国崎さんは言う。

「(家族であるペットと離れて暮らすわけにはいかないという飼い主と、ペットと人を避難所で同居させるべきではないという人たちとの間で、様々な問題が起きていることについて)私は、このペットの問題は、様々な被災地で起きている小さな子どもに関する問題と、ほぼ同じだと感じています。

愚図ったり、泣いたり、あるいはオムツの臭いがするなど、小さなお子さんがいらっしゃる家庭が気兼ねすることは多いです。

同じようにペットも、匂いや鳴き声などで、周りの方を気にしてしまいます。小さな子どもは、慣れない避難所で暮らすことへのストレスを感じますが、ペットもまた慣れないケージで、ストレスを感じます」

一般的には、災害時の避難という非常事態では、不便でつらいのは当たり前。贅沢を言ったらバチがあたる…的な感覚があるが、それは果たして正論なのだろうか。

先日、東日本大震災や熊本地震のときに被災地へ行き、医療支援にあたったある救急医が次のように嘆いていた。

「阪神・淡路の震災を機に、日本の災害医療は進化したと思われているが、避難所運営ではあまり進んでいない。ギリギリの生命を救うという意味での災害救急は進化しましたけどね。

避難所でベッドが使われるようになったのは、ようやく熊本地震からですよ。

それまでは、床にじかとか、せいぜい段ボールとかを敷いて寝かせられていた。硬いし不衛生だし、病気じゃない人まで病気になります。災害は日本中どこでも、いつでも起こり得る。

避難所を快適で衛生的に過ごせるよう求めるのは、決して“贅沢”ではないと思います」

ペット連れでの避難は、人によっては許し難い“贅沢”と感じる人もいるかもしれない。

だが、ペットを家族と感じている人間にとっては、至極当然であり、避難所生活だって、ペットと一緒に寝起きするのは当然のことだ、ということを分ってほしい。

また、則久さんは、こんなことも言っていた。

「一人ひとりが動物に対して持つ思いは多様です。そのことを理解しつつも、考え方が違う方に対して寛容な態度をもって接することが、結局は、この『社会的規範を作る』という部分につながり、ひいては、人と動物が共生する社会をも作るのではないかと考えます。

その上で、災害時の色々なトラブルの解消を最小化することにもつながっていくように思っています」

要するに、人もペットも生きるか死ぬかの大災害時に、ペットの生命を守るには、常日頃から周辺住民と仲良くし、動物嫌いの人たちにも快く受け入れてもらえるようなしつけと飼い方をしておくことが重要なのである。

愛犬がしたウンコを放置したり、無駄吠えさせっ放しにさせるなんてことは、絶対にしてはいけない。つまり、ペットの災害対策のポイントは、日常生活の延長線上にある。いざという時だけ慌てても遅いのだ。